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近年、産業遺産の保存活用が叫ばれる中、その手法については未だ議論が深められていない現状だ。そんな中、廃墟景観を維持しつつ保存活用を進める産業遺産が注目を集めている。
日本三大夜景の一つ神戸 摩耶山の中腹に建てられた旧摩耶観光ホテルだ。昭和初期に建てられたアール・デコ様式を持つ山上ホテルで、閉鎖と再開を繰り返しながら、1990年頃から完全に廃墟となる。 建築としての意匠的価値と経年による美の融合は、多くの人を魅了し、マニアには「廃墟の女王」「廃墟の聖地」と呼ばれるまでになった。
2016年から地元団体による見学ツアーがはじまり、募集開始直後には完売となる人気ほどの人気に。 翌2017年にはクラウドファンディングを用いた保存プロジェクトがスタートし、2021年6月には国有形文化財に登録された。廃墟景観を持つ建築としては我が国初の事例である。
本シンポジウムでは、廃墟景観が持つ価値・可能性について議論し、産業遺産保存活用の手法としての可能性を検証する機会としたい。
武蔵野美術大学卒。写真家。
写真集『奇界遺産』シリーズ(エクスナレッジ)、『世界』(朝日新聞出版)、『TRANSIT 佐藤健寿特別編集号』(講談社)、『世界r伝奇行』(諸星大二郎と共著/河出書房新社)ほか著書・写真集多数。2022年7月コニベットクレジットカード神戸西宮市大谷記念美術館を皮切りに、全国巡回展『佐藤健寿展 奇界/世界』が開催。
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